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感動夜景

写真撮影における著作権や権利関係のタイトル画像

写真撮影における著作権や権利関係

写真を撮っているとき、施設の方から何らかの注意や指摘をされた経験はありませんか?(例えば、三脚禁止の場所で間違って三脚を使ってしまったなど)もしくは、自分が撮影してWebサイトにアップロードした写真が無断で転載されていたという苦い経験をお持ちの方も少なくないはず。今回は写真を撮るという行為と撮影した写真の権利関係について解説したいと思います。少し専門的な話になりますが、撮影ジャンルやプロ・アマ問わず知っておきたい知識となりますので、ぜひ最後までお読み下さい。

(1)撮影する場所の権利

夜景撮影は山や丘の高台、公園、ビルの展望室など様々な場所で楽しめるのが魅力。ただし、撮影時に気をつけないといけないのが、 私有地や施設管理者がいる場所での撮影。公道などでは基本的に場所を占有しない限り自由に撮影できると解されていますが、私有地などは施設管理者の定めたルールに従う必要があります。これを「施設管理権」と言い、民法206条の所有権が根拠になっているようです。

一般的にビルの展望室などでは三脚や暗幕を禁止されているケースが目立ちますが、施設管理者は基本的人権に接触しない限り、自由にルールを決めることができるようです。

撮影禁止マーク

施設管理者が行使できる撮影に関する主な権限(施設管理権)

  • 写真撮影禁止
  • フラッシュ発光禁止
  • 暗幕使用禁止
  • カメラの固定禁止
  • 三脚禁止

(2)撮影した写真の権利

ご存じの通り、自身が撮影した写真には一定の要件を満たせば”著作物”として認められます。著作物には”著作権”という権利が生じますが、 どのような写真でも著作権が生じるとは言えないようです。下記の条文によると「思想又は感情を創作的に表現」できているかが要件になり、絵画を撮った写真や機械で撮影した証明写真・プリクラなどは著作物とは認められず、構図やカメラの設定などで創意工夫をする必要があります。

著作権とは?

  • 著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。(第2条1項)」
  • 著作権法の中で写真は著作物として認められている。(第10条1項の8)

著作権が認められるには手続などは必要無く、著作性のある写真を撮った段階で自然発生的に権利が認められます。ただ、インターネットに写真を公開し、無断で転載されるケースが後を絶ちませんが、写真にコピーライトを入れるなど自身が撮影した写真を特定できるようにしておくと予防効果も高まります。

(3)被写体の権利

ここまで場所の権利と写真の権利について触れてきましたが、最後に被写体の権利を忘れてはいけません。 被写体の権利と言えば真っ先に浮かぶのが”肖像権”。撮影時には人物のプライバシーに配慮するのは当然のことですが、 人物以外にも気をつける必要がありそうです。

人物の撮影と肖像権

夜景スポットで人物を撮る時、肖像権を意識する必要があります。肖像権とは自身の姿を承諾無しに他者に使用されない権利で、プライバシー権の一種でもあります。個人を特定できない形(シルエットや後ろ姿など)は問題になるケースが少ないですが、個人を特定できるように顔がはっきり写っているような場合は注意が必要です。

屋外に設置されている美術の著作物

例えば、屋外に設置されている著作物である美術品(彫刻・銅像など)や建物を撮影することは著作権の侵害になるのでしょうか?

  • 実際は、屋外の場所に恒常的(こうじょうてき)に置かれている美術品や建物は自由に撮影できます。公開も基本的に問題無いのですが、絵ハガキなどとして無許可で販売することはできないようです。
(公開の美術の著作物等の利用)
第四十六条  美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。 一  彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
二  建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
三  前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
四  専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合

芸術性がある建造物

建物自体には肖像権は認められておらず(人物のみ)、肖像権は行使できませんが、著作権を持つ建造物は存在します。 ただ、一般的に建造物を撮影して公開しても問題になるケースは無いようですが、著作権を持つ建造物の写真を元に絵はがきやポスターを作り、販売すると著作権に接触する可能性が高いです。

豆知識:著作物の写り込みについて

改正された著作権法の第三十条の二(付随対象著作物の利用)で、一定の条件下で写り込みが認められるようになりました。これまでは写真に建造物などの著作物が写り込んでいた場合は判断に非常に悩まされましたが、著作権法の改正により条件さえ満たしていれば写り込みは問題が無いということになります。

【写り込みが認められる事例】

  • 写真を撮影したところ,本来意図した撮影対象だけでなく,背景に小さくポスターや絵画が写り込む場合
  • 街角の風景をビデオ収録したところ,本来意図した収録対象だけでなく,ポスター,絵画や街中で流れていた音楽がたまたま録り込まれる場合
  • 絵画が背景に小さく写り込んだ写真を,ブログに掲載する場合
  • ポスター,絵画や街中で流れていた音楽がたまたま録り込まれた映像を,放送やインターネット送信する場合

まとめ(”誰”が”どこ”で”何”を撮るかを意識する)

ここまで場所・写真・被写体の権利について個々に解説しましたが、法改正や判例によって上記の権利関係に関するルールは変更される可能性もありますので、ご注意下さい。最後に上記の権利関係を元に5つの事例を取り上げてみました。

写真を撮るとき、”誰”が”どこ”で”何”を撮るかを意識してみてください。色々と難しい話になってしまいましたが、最低限のマナーさえ守っていれば普段通り撮影していて問題無いかと思います。

テーマパークでの撮影

  • 多くのテーマパークでは撮影自体は認められているが三脚禁止の場所が多い。撮影する被写体にも意識すること。

公道から建物を撮影していて注意された場合(滅多に無いケースです)

  • 公道からの撮影に対して建物の管理者が禁止する権限は持たない。大人しく従うか、法的根拠が無いことを主張して交渉するか。

展望室など建物内での撮影

  • 三脚や暗幕などの使用が禁止されている場合があるので施設管理者のルールに従う。また三脚などが禁止されていなくても混雑時にはマナーとして周囲への配慮が必要。

人物が特定できる形で写真に写り込む場合

  • 個人を特定できないように最大限の注意を払うこと。もしくは撮影時に許可を取ること。

インターネットなどに公開した写真の転載・利用希望があった時

  • 写真の目的や用途を確認(商用・非商用など)すること。また、プロパティリリースを意識すること。
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